2011-01-01から1年間の記事一覧

うさぎのお話〜疑惑〜

ママのウサギ好きは今に始まったことではない。 かつて、マンションの裏手にこれもまた大きなウサギが飼われていたという。 ウサギは檻に入れられ、外で飼育されていた。 ママは来る日も来る日もウサギの元へ通った。 勝手にモグモグちゃんと名付け、それは…

うさぎのお話〜序章〜

ママが目黒駅のホームで終電を待っていたら 隣に「何か大きなもの」が寝そべっていたという。 何かと思ってよく見ると、口をもぐもぐさせており、その横にはおじさんが居た。 それはでかいウサギと飼い主のおじさんだった。「触るかい?」 おじさんは不敵な…

1月1日零時零分のお話

ママの家の留守電は、いつ録音されても 「イチガツ、ツイタチ、レイジ、レイフン。」 とアナウンスするそうだ。 よくその真似をしてくれる。おめでたいアナウンスだが、ことあるごとに直したい、直したいと言っている。 シルバー人材センターから庭師を呼ん…

サンタクロースの仲間のお話

以前捨てられないサンタクロースの話はしたが、 ママの家にはそれ以外にも仲間が大勢いるようだ。 「うちはね、ソファーいっぱいにぬいぐるみがあるのよ。まず、こんな鳥ね。こんな形の鳥なのよ。」 指でカウンターテーブルに描いてくれる鳥の形状は、およそ…

不可解な皺のお話

ママはかわいい。 いまだそれ相応の老人にはナンパもされる。 何より肌が綺麗で83にしては皺も少ない。 目尻なんか笑い皺も無い。その秘訣を聞いてみた。「あたしは皺は少ないのよ。 お金がある頃は外国の何万かするような化粧水も使っていましたけどね。 …

犬の記憶のお話

前述のとおりママの話には虫や動物がよく出てくる。 虫は嫌いで動物は結構好きだ。 庭でひよどりの餌付けもしているが、えさを狙って来たカラスは傘で追い払う。 その場面のみ見るとあたかも 「近所に一人は居る名物婆さん(ハデバデしい色彩の服を好み、人…

虫厭う姫のお話 クモ編

彼女の前には「蜘蛛は縁起が良いから殺してはならぬ」という言い伝えは力を無くす。 蜘蛛の糸など地獄には垂れてこない。 とにかく、蜘蛛を見たら、コロス! これが老人にあるまじき彼女の虫論である。という話はよくしていたので、蜘蛛とママが犬猿の仲であ…

虫厭う姫のお話

私はサラダに入れるべくピーナッツを包丁の平で潰しながら 一昨年の悪夢を思い出していた。以前住んでいた築30年のマンションでのことだが ピーナッツの袋が空いたまま普段使わぬ引き出しに仕舞われており 黒いあいつ達がうまうまとそれを糧としていたのだ。…

サンタクロースが捨てられないお話

捨てられないものってあるわね、という話から、この話は始まった。以前ママ(83)が家の近くの金物屋さんに鍋を買いに行ったところ、そこの店番の女の子がとても綺麗でついホステスにスカウトしたそうだ。 ママはいつも自らスカウトする。 そのくせ、この店で…

消えた頭と開かずの間のお話

ママ(83)と話していたアヤがひどく驚いた。 「ええ!そんなことってあります!?」ママはヘアピースをしている。 髪を盛る、というか、補填している、と言える。帰って脱いだら20分ブラッシングするのだそうだ。 20分というのも流して聞いていたが、改めて考…

果てしないお食事のお話

かつて、こんなに他人の普段の食生活の詳細を把握したことがあっただろうか。ママは食べることが好きだ。 食べ物の話がよく出てくるし、お客さんに積極的に外食に連れて行ってもらおうとする。 ときには「なかなか連れて行ってくれないから自分で電話しちゃ…

ゼリーへの疑いのお話

ママはピエスモンテのクッキーが大好物。 何かと言えばピエスモンテの話が出て来る。「こんなちいちゃな箱で2000円もするのよ。これをね、夜寝る前に一枚食べるんです。牛乳と一緒に。それが一日の贅沢なの。」こんなちいちゃいことを伝える為に、カウンター…

謎の鍵のお話

さて、私が初めてこのバーに来たときの話である。 ちょっと見学のつもりが行ったらすぐに働く方向で話が進められた。強引ではあったが、初対面のママの印象はかわいいおばあちゃんという感じ。 首がちょっと前に出ているから、からくり人形を彷彿とさせる。 …

小さなバーでのお話

さて、始めるとしましょう。これは私の身の周りの珍奇なワールドの記録である。 恐らくは、私の勤務先のバーが頻出するであろう。 まずは、紹介から。そのバーは銀座のはじっこにある。 古い友人、綾の紹介で働きはじめて約半年。だいぶ慣れてきた。 接客に…