1月1日零時零分のお話

ママの家の留守電は、いつ録音されても
「イチガツ、ツイタチ、レイジ、レイフン。」
とアナウンスするそうだ。
よくその真似をしてくれる。

おめでたいアナウンスだが、ことあるごとに直したい、直したいと言っている。
シルバー人材センターから庭師を呼んだとき見てもらったそうだが、さじを投げられたそうだ。

ある日ママは電話の取り説を持ってきて綾に渡した。
「あなた直せるかしら。」
本体も無いのにどうすればいいんだ。
優しい綾はそれとなく矛先を変えた。
「こういうのは北さん(渋いバーテン60代後半)の方が詳しいんじゃないですか?」
「だめなの。北さんには今別のことをお願いしてるのよ。」
見ると、北さんはスティックのりの使用方法を説明させられていた。
仕方なく取り説を読み、結局
「ここに書いてある通りにすればいいんだと思います。」
としか言えなかった綾。
無理もない。本体は手元に無いのだから。
だが最早ママの興味はスティックのりに移り、本当につくのか懐疑的な発言を繰り返していた。