うさぎのお話〜疑惑〜

ママのウサギ好きは今に始まったことではない。
かつて、マンションの裏手にこれもまた大きなウサギが飼われていたという。
ウサギは檻に入れられ、外で飼育されていた。
ママは来る日も来る日もウサギの元へ通った。
勝手にモグモグちゃんと名付け、それはそれは愛おしんだ。

ある日、立派な小松菜を入手したママは、
葉先の柔らかいところをめいっぱい摘んでモグモグちゃんに進呈した。
モグモグちゃんは喜んでそれを頬張った。
モグモグモグモグ食べ続けた。
それが不幸への序曲とも知らずに・・・

翌日、いつものようにママがモグモグちゃんのところへ行くと、まさにモグモグちゃんは家の方に看取られて亡くなる直前だった。
獣医の見立てでは、食べ過ぎ。
・・・明らかに昨日の小松菜だ。
ママは、何も知らない飼い主の方々の中に割って入り、末期の水を飲ませたという。
ウサギに水は良くないのではと思ったらしいが、飲ませた。

こうして、モグモグちゃんとの蜜月は終わった。

翌日、モグモグちゃんの檻に綺麗なカサブランカが供えられていた。
誰か、ママと同じくモグモグちゃんのファンだった人がその死を悼んだのであろう。
ママが通りかかると、飼い主の方々が出て来て「カサブランカをお供えして頂いたのはあなたですね。」と涙を浮かべた。
ママは、つい「そうです。」と答えた。