うさぎのお話〜序章〜

ママが目黒駅のホームで終電を待っていたら
隣に「何か大きなもの」が寝そべっていたという。
何かと思ってよく見ると、口をもぐもぐさせており、その横にはおじさんが居た。
それはでかいウサギと飼い主のおじさんだった。

「触るかい?」
おじさんは不敵な笑みを浮かべ、ウサギをよこした。
ウサギは名をメグちゃんといい、おじさんはいつもメグちゃんを連れて飲みに行くという。
「今日は五反田だけど、目黒も行くよ。」
ママは動物アレルギーがあるらしいが、果敢に触ってみた。

そのうち電車が来ると、おじさんはメグちゃんを強引に袋に詰め、電車に乗った。
ゲージか何かを袋と称しているのだろうと確認したのだが、
「ひもできゅっと縛る布の袋」だったらしい。
ひもできゅっとしばったところからメグちゃんの足が出ていたという。
何とも粗らしい連れの扱いではないか。
ママはすかさずおじさんの隣の席をキープし、銀座のお店の名刺を渡した。
メグちゃんに来て欲しくなったのだ。

そんな話をしながら、ママは死んでしまうのではというほど遠い目をしていた。
「ウサギにはね、色々思い入れがあるのよ。」

少々長くなるので本編へ続く。